寒さを感じるようになってくると、牡蠣の美味しい季節がやってきます。
鍋やフライ、シチューなどに加え、シーズン中に一度は生でも食べたいものです。
ところで、スーパーなどで見ていると、同じ牡蠣でも「生食用」「加熱用」と書かれたものに分けられていますが、この二種類はどこがどう違うのでしょうか…。
衛生上、鮮度が異なるようなことは考えにくいため、店頭に並ぶまでの何かに差があるようですね。
そこで・・・牡蠣の生食用と加熱用の違いや、出荷までの作業の流れなどについてもご説明しますね!
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目次
牡蠣の生食用と加熱用の違いとは?
「生食用」と書かれたものの方が「新鮮なのか?」と思われがちですよね。
しかし、牡蠣の「生食用」と「加熱用」の違いは、鮮度の差ではありません。
「生食用」と書かれたものは、保健所が指定した海域で育てられ、かつ浄化漕で規定の浄化を経て出荷された牡蠣のことを指しています。
もちろん、鮮度がよくなければ生食する気にもなりませんが、いくら鮮度がよくても「加熱用」と書かれたものは、生食はできません。
この「保健所が指定した海域」というのは、下記のように定められています。
・条件付指定海域:採取した牡蠣に人工浄化を行うことで、生食用として出荷できる海域
・指定外海域:加熱調理用しか出荷できない海域
つまり、3つ目の指定外海域で育てられたものは、生食用になることはありません。
簡単にシステムを紹介すると、指定外海域のほうが海岸に近く、指定海域に行くに連れ、遠い沖合になります。
海岸に近い地域の方が生活汚水などが河川から流れ込むため、遠い沖合とは水質に違いがあり、海水に雑菌が多いという特徴があるのです。
牡蠣の産地で有名な広島市の場合は「沿岸から2~30km沖合の検査に合格した海域」が指定海域となります。
そして、上記の検査の基準としては 「海水100ml当たり大腸菌群最確数が70以下」であることが求められます。
もちろん、大腸菌がいるからといってすぐに危険となるわけではありませんが、他の細菌を含めどれほど汚染されているかの目安にはなるようです。
牡蠣の生食用と加熱用の出荷までの作業の違いとは?
加熱用の牡蠣は、どこの海域で捕れたかは問題になりませんし、浄化作業も行なわず そのまま出荷されます。
生食用の牡蠣になると、浄化漕で保健所が定める規定での浄化が行われるという具合に、作業にも違いがあるのです。
この規定は全国共通の規定ではありません。
一番しっかりとした規定があるのは広島県とされています。
それによると、生食用の牡蠣は採取されてから 滅菌洗浄を行うため、滅菌処理をした水、または大腸菌の数が一定数以下の海水の中で2~3日間断食をさせます。
断食をさせる理由は、牡蠣が生まれながらに食中毒の原因菌を持っているのではなく、食べたものの中に原因菌が含まれているからです。
そのため、牡蠣を綺麗な水の中において腸の中を空にする必要があるのです。
このような滅菌洗浄という作業を行うか行わないかの違いが、「生食用」と「加熱用」を分ける大きなポイントの1つとなっています。
生食用の牡蠣は安心して生で食べられる?
レストランなどで提供される生牡蠣は、きちんと処理されていることはわかりましたね。
しかし、本当に「あたる心配はない」と安心して食べられるのでしょうか…。
加熱用の牡蠣を生で食べたわけでもないのに「牡蠣にあたった」という話は、さほど珍しくありません。
牡蠣は、食べる人の体調(免疫力低下)によってもあたってしまうこともあります。
また、非常に個人差があり、いくつも食べた人が全然平気なのに、1つしか食べなかった人があたってしまうこともあります。
このように 「生食用だから絶対大丈夫!」というわけにはいかないのが、牡蠣などの貝類の特徴でもあります。
というのも、感染性胃腸炎を引き起こすノロウイルスが大きく関与していることが多いからでもあります。
ノロウイルスは牡蠣の中で繁殖するのではなく、牡蠣を食べた人の体内で繁殖します。
実は、現在の浄化方法では、牡蠣の中のノロウイルスを完全に死滅させることはできません。
ノロウイルスが残っている牡蠣を1つでも食べてしまえば症状が現れます。
したがって、次の日に重要な予定や約束がある場合は、生食だけは控えた方が賢明ですね。
加熱用の牡蠣の下処理や加熱温度・加熱時間は?
鍋に入れようと思って買ってきた牡蠣を充分加熱しようとしたら、小さく縮んでしまってがっかりしたことはありませんか。
一体、加熱時間はどれくらいが適当なのでしょうか…。
牡蠣にあたってしまう主な原因はノロウイルスです。
幸いなことにノロウイルスは熱には弱いため、85度以上の熱湯で1分以上加熱すれば死んでしまいます。
「念には念を入れて」と思う場合は、牡蠣の中心温度が90度になってから90秒以上加熱しましょう。
そんなにグラグラ長時間煮立てる必要はありませんが、牡蠣の外側ではなく中心部にまでしっかり熱を通すことが必要です。
鍋にする場合、他の具材にほぼ火が通ってから牡蠣を入れ、牡蠣に火が通ったら食べ始めるくらいがちょうといいと思われます。
鍋に入れる前の下処理の手順を以下に示します。
まず牡蠣をザルに開けるなどして、パッキングされていた時の水分を切ります。
ボールに水と塩を入れ、塩水を作ります。
水500mlに対して塩小さじ1が目安です。
必ず塩水を用意し、出来るだけ冷たくして下さい。
最初は牡蠣を軽くゆすりながら、全体をかき混ぜて汚れをざっと落とします。
次に、牡蠣を一粒ずつ黒っぽいひだの部分をこするようにして洗います。
最後にもう一度全体をゆすいで水気を切ります。
牡蠣の身が崩れないように指で優しく扱って下さい。
片栗粉や大根おろしをまぶして洗っても、汚れがよく落ちるので試してみて下さい。
牡蠣の生食用と加熱用の違いを中心にご紹介しました。
牡蠣は1日に大量の海水を体内に取り込み、その中の養分などを吸収しています。
そのため、養分やプランクトンの多い沿岸部で捕れた牡蠣の方が身がよく成長していて美味しいのですが、雑菌なども取り込んでしまっているため生食には適していません。
つまり、生食用、加熱用にそれぞれ美味しさにも違いが出るため、調理法だけはしっかり守って食べたいですね。
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